井 伊 美 術 館
当館は日本唯一の甲冑武具・史料考証専門の美術館です。
平成29年度大河ドラマ「おんな城主 井伊直虎」の主人公直虎とされた人物、徳川四天王の筆頭井伊直政の直系後裔が運営しています。歴史と武具の本格派が集う美術館です。
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母利美和氏監修になる
『図説 日本の城と城下町⑦彦根城(創元社)』ガイドブック中の
出典不記載及び歴史事実の誤認その他について
本稿において私は、史学者及びそれに類する人々が原史料名をあげながら所蔵者を脱落させたという不手際を指摘し、その行為について反省を求めるつもりで執筆している。そのほかにも該当本には後世を誤る虞れにつながる挙措動作が複数見られるため例を挙げて指摘しているが、その重大性を真摯に受け取って改心反省してもらいたいと思いからである。念のため云っておくが本稿表題のガイド本監修者である母利氏に遺憾の思いはあるが個人的に怨恨はない。またこの図書の奥書には著者の表記がなく、執筆は協力者として数氏の名が掲げられてある。この人々は歴史の専門家ではない事務的協力者であろうから、この方々にも何ら問題はない。出版社の創元社さんもまた然りである。批判の対象外の方々である。初めに断っておく。
〈1〉
(一)典拠史料所蔵者不記載の件 —序にかえて—
上記の書名の薄い冊子本が発刊され、先日監修人の母利美和氏より贈呈された。
念のためいえば、監修とは別の著者が執筆した内容について、専門分野をもって表現が正しいかなどを監督する人物をいう。いうまでもなく本稿においては、母利美和氏がその人である。ちなみに母利氏とは、『新修彦根市史』の編纂に際して史料協力して以来の古い知り合いである。「存知」は長い。
井伊氏の歴史と武具を調査研究する仕事が多い私とは、約言すれば「古い知人」と言う関係である。そのわけは以下読んでいただければ自らあきらかである。
氏の名を知ったはじまりは、私が修造している彦根藩史料の一部を目録として刊行したのをみつけ、重要性を最初に感知し、連絡をとって来た御方であるというところだ。歴史研究上第一義的に必要な原本史料及び記録類の在処(ありか)を見つけた人で、史料の開拓者としてはお手柄の仁である。しかし私は母利氏を猟師に例えるなら有能なハンターであるが、解禁時を逸まったり、猟域を超えたりするタイプの猟師ではないかと考えたりもする。そのわけも以下通読してもらったら納得いただけるのではないかと思う。
話が逸れたが頭書のガイド本は専門家向けの史学書ではなく一般読書人向けのガイドブックである。しかしそうだといって、公平性と正確さを欠いた歴史記述、または引用した文書史料の典拠や所蔵者名を省略することは行ってはならないだろう。編集上の方針の如くにいうのは論外である。かような振る舞いは資料の所蔵者は勿論のこと一般の読者をもその無知につけこみ欺くような行為といえまいか。あまり穏やかではないと思える。以上の様な事柄から始まって、上記ガイド本(以下「ガイド本」と称す)には他にも重要な誤記があることがわかった。この誤りは明確に指摘し訂正される必要があると思えるので、筆をとった次第である。
2025.3.8 断り書き追記しました。
目次
(一)典拠史料所蔵者不記載の件 —序にかえて—
(二)「所蔵者不記載」発見とその顛末
(三)『歴程集』中における母利氏評
(四)母利氏の「二代井伊直継」恣意的省略
(五)『新修彦根市史』による「直継二代の恢復」
(六)述べて作る行為
(七)ガイド書中の掲載系図の誤りについて—懐しき井伊直虎物語
(八)同書中の附録関係図書紹介項「彦根城と城下町を舞台とした関連作品紹介」における『獅子の系譜』の誕生の真実
(九)後書きにかえて
(二)「所蔵者不記載」発見とその顛末 へ