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母利美和氏監修になる
『図説 日本の城と城下町⑦彦根城(創元社)』ガイドブック中の
出典不記載及び歴史事実の誤認その他について

〈6〉

 

目次

 


(一)典拠史料所蔵者不記載の件 —序にかえて—
(二)「所蔵者不記載」発見とその顛末
(三)『歴程集』中における母利氏評
(四)母利氏の「二代井伊直継」恣意的省略
(五)『新修彦根市史』による「直継二代藩主の認証」
(六)述べて作る行為
(七)ガイド書中の掲載系図の誤りについて—懐しき井伊直虎物語
  (八)書中の附録関係図書紹介項「彦根城と城下町を舞台とした関連作品紹介」における『獅子の系譜』の誕生の真実
(九)あとがきにかえて

(六)述べて作る行為

  

 以下突然大上段に振りかぶった感があるやもしれないが、「述史」の根本的姿勢について今更ながらであるが記しておきたい。

 ゆらい我国では歴史の演述の範を中国の史書にとっている。すなわち『論語』『史記』や『漢書』その他模範書を挙げるに遑がない。しかしその貫通するところの第一義は「述ベテ作ラズ(論語—述而)」である。興亡たえまのない現世において英雄たちは「今」よりも「来世」——没後において、史書上如何に記され評価されるかを第一に心に懸けおのれの一挙一動に心した。短い人生ではなく、永い時代を生きる「歴史の書」は「人間の証明」であった。その思想の大統は儒学として我国に伝えられ、「仁義礼智信」にはじまる根本思想は時代の学匠学徒によって忠実に伝播されていった。

 私はここで儒学の話を貧弱な知識知脳で語ろうとしているわけではない。すべからく、歴史をのべるものは、正史を伝えることに心血を注ぐべきで、おのれの好悪や価値判断だけをもって歴史を按配し、史乗すべき歴史の案件を取捨選択してはならぬ——ということである。少なくとも歴史をのべるものは「公明正大」が旨でなければならない。これは当たり前のことである。しかしこの当然が実は実行されていない場合が少くない。怪しい史書は消えることはないかと思われる。

 

 以上述べたところは以下記述のための前説である。表題の如く彦根井伊家の歴史をのべるについて、母利氏は意識的に「二代井伊直継」を省略した。これを行って「彦根藩史」を書述することは畢竟するに甚だしい不義を行うに等しいと私は思うが間違っているだろうか。まさに「述ベテ作ル」穏やかならぬ行いで、「歴史」の取り扱い上放置しがたい危惧を感じるのであるがいかがなものか。

ある。

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